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ピンがつくだけで大注目!?

〜テナントファーストが生んだアメ村の珍百景〜

ライター:橋戸翔

ここは、心斎橋のアメリカ村に続く八幡筋。
アメ村といえば、古着屋が並ぶ大阪のファッションスポット。若者が集まり、独特なカルチャーが生まれ続ける文化とアートの発信地でもある。この日もおしゃれな若者たちが街を行き交って・・・ん?

・・・どういうボウリング場!?

ニトリに生えるピン”の正体「心斎橋サンボウル」

実はこの看板、SNSで密かに話題にされてきたアメ村の隠れ名物スポット。 “ニトリの看板にピンが生えてる!?”という珍百景は、アメ村の愛される目印になっているのだが、この看板はどのようにして生まれたのか?その真相を探ってみることにした。お話を伺うのは、このビルの3F~5Fにお店を構える「心斎橋サンボウル」の支配人、岡本功一さん。

岡本さんによると、心斎橋サンボウルを運営する株式会社グランドボウルはボウリング事業及びテナント運営管理を手がける企業。このビル「BIG STEP south」もグランドボウルが管理する建物で、その一角をボウリング場として利用している形だ。

岡本さん:現状の形になる前は、看板は4面とも心斎橋サンボウルのロゴが施されていました。2016年にニトリ様にテナントとして参入いただいた際に、せっかくなので看板も使っていただける方がいいのではということで、デザインをガラッと変えました。とはいえボウリング場は残るのでピンのオブジェを残すことに各所違和感はなく、今のような形に落ち着いたんです。


2016年までの看板の様子

「ニトリにピンが生えた看板」は、ボウリング場〜不動産事業を1つの企業が行なっているからこそ生まれた光景だったのだ。
そしてメディア利用という形式ではあるが、これだけ目立つ看板をテナントが利用できるように開放し、自店舗の告知機能はピンに委ねたとのこと。そんなテナントファースト精神がこのフォルムを生んだと思うと、ますます愛着が持ててしまう。

「企業看板×ピン」が生む広告としての相乗効果

そして特筆すべきは、この看板が面白がられているというだけでなく、一種の広告としての役割も果たしているということだ。岡本さん曰く、お客様に道順を尋ねられた時には、この看板を目印に案内することが多いとのこと。この状況はSNSでも発生しており、「目印はニトリとボウリングのピンです」と共に看板の画像を投稿している例が散見される。さらには「ホテルに泊まりながら遠くを見てたらニトリの上にピンがあるw」などの発見報告も多い。

つまりこの看板は、本来はなんの接点もなかったはずの人が、この場所にニトリとボウリング場があることを無意識に知るきっかけにもなっているのだ。“ニトリにピンが生える”というカオスな光景は、アメ村で一番の屋外広告と言えるのかもしれない。

心斎橋サンボウルならではのユニークアクション

彼らの提供魂が生んだのは看板だけにとどまらない。アメ村の土地柄もあり、他にもユニークな取り組みを行なっているそうだ。

岡本さん:過去に私がピンの被り物をしていた時に、その姿を当時のスタッフが絵に描いたのが盛り上がり、押していこうとなりまして。CM動画を撮ったりとか、ステッカーやLINEのスタンプ作ったりとか。私自身がピンの着ぐるみを被ったまま夜の街に出て、フライヤーやチケットを配っていた時期もありました。
CMは何度か制作していますが、バージョン2ではちょうど看板の近くでドローン撮影を行なっており、終盤にちらっと例のピンも映っています。

  • 岡本さん:キャラクターはいろんなところで使ってまして、併せて発信方法も工夫しています。よく間違われる「ガーター」ですが実は「ガター」。それを面白くいじって、「#ガーターちゃうガターや」というメッセージをつくり、SNSや配布物で発信していますね。

若者がもっと気楽にボウリングを楽しめる場所を

岡本さん:アメ村にボウリングを目的に来ている若者って少ないと思うんですね。そもそもボウリングって、エレベーターで上がって、受付して、靴履き替えて、ボール選んでみたいな、めんどくさいイメージも持たれやすい遊び。うちでは「靴は置きっぱなしでお帰りください」みたいなこともやってますが、ピンのキャラや各取り組みを通じて、感覚的にはボウリングをダーツやカラオケ等と同類の遊びと思ってもらえたらなと。

ご紹介した一連の取り組みの裏には、ボウリング愛だけでなく、面白くなるなら自らボウリングマンに変身するという行動力と、来場者やテナントへの提供魂がある。その姿勢が、あのニトリの看板やそれに劣らぬユニークな魅力を生み出し続けていた。共存共栄が生むカオス。それがオモロイを生むのかもしれない。

編集陣も遊ばせていただいた

取材後に編集陣も1ゲームプレイさせていただいた。インテリアはニトリのソファが置かれた、ウッド調のおしゃれな空間。

最初の2投、編集長と揃いも揃って「ガター」であったが、やはりボウリングは最高だ。