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2部リーグで戦う。

〜アイデアも失敗も、発明する会社〜

ライター:乙藤康太郎

変わったアイデア商品を生み出し続ける会社

単3電池を単1電池にしちゃうアダプター、迷惑電話中に来客が来たかのように振る舞えるピンポン、「こんなんありなん?」な発明品ばかりを生み出し続ける会社 スマイルキッズ株式会社の原守男さん(以下、原さん)にお話を伺った。

役に立つものを買うだけやったらおもんない。

  • -早速なんですけど、この「迷惑電話お断りピンポン」は、客が来てないのに「ピンポ〜ン♪あ!お客さんやわ!失礼します〜」という茶番をさせる、ということですか。

    原さん:はい。

    -これは、、、革命です。東京では、たぶん誰もやらない。

    原さん:そらちょっとウケへんやろうね(笑)

    原さん:でも、ただお金出して役に立つもの買うだけやったらおもんないじゃないですか。
    人って、「ようここまで考えたな」という商品を使ってはじめて、感動するというか。「ええ!」とか「グー」とか唸るような、そういうのがぐっと沸き起こるというところを狙っているんですよね。

商品を売っている、というより博打を打っている。

-「これは売れるな」っていうのは商品企画の段階でわかるものなんですか?

原さん:うーん。僕に言わせたら半分ぐらい博打なんですよ。

-博打。

原さん:そう。結局博打やから、当たるか外れるかっていうのは売ってみないとわからへんです。

原さん:マグロ船にしても何にしても、ここ行ったらマグロ釣れるんちゃうかとか、カツオ釣れんのちゃうかと思っても、行ってみな分からへんし、竿を入れてみな分からんでしょ。釣れへん時もありますよ。それと一緒で、やってみなければわからない商売は実は世の中に結構あるんちゃうかなって。絶対確実に売れるなんてやるのは受注生産だけですわ。注文来た分全部買うてくれるから。
ところがそれをやると、仕事自体おもんないですよ。注文来た分だけやって、きちっと来た分だけ集金してっていうのは面白くない。面白さがついてくるのは、バカンと売れたとか化けるとかなるときなんでね。それでその味を覚えると、みんなノリがええですよね。

失敗の部屋。

-博打ということは、、、外れるときもあるんですか?

原さん:売りに困ってる商品もいっぱいありますよ(笑)

原さん:ある一定の比率で外れるし、ある一定の比率で引き分けになるし、ある一定の比率で当たるみたいな。隣に、売れへん商品、とりあえず終わった商品とかを全部入れた「失敗の部屋」というのがあります。
-失敗の部屋?

早速、失敗の部屋を案内してもらうことに。
部屋の扉には、禍々しい色合いのわりに良いことが書いてある『失敗ROOM』と書かれたステッカーが貼ってあった。

※歴代の懐中電灯を展示した『懐中電灯博物館』も同時開催中。

-これ全部失敗ですか?

原さん:売れたけど終了と、売れへんかったら終了とかいろいろあります。

原さん:たとえばこれね、「時計つきUVチェッカー」

原さん:紫外線があるから女の人にええやろうという話やけども、まあそんなん見んでも外の天気見たらだいたいわかるから、全然売れへんかった。あと、男性だけのチームで女性向けの商品を開発した。「猫顔にしたら、喜ぶんちゃうか」って。これがあかんかった。しょっぱい失敗パターンですね。

-これ、テーマパークとかでバカ売れしてる・・・?

原さん:そう、夏に涼しいやつ。彼らが始める前に、僕らが手を出した。相当前にやったんですよ。そんで、「これ水いっぱい入れて持ち歩いてください」っていうのをやったけど、水いっぱい入れると結構重い。だから失敗。思いついても、うまいこと冷静に時代を見とかんと失敗するっていうのもありますね。

原さん:あとこの部屋ね、電気消すとね、蓄光でここが光るんですよ。

-うわっ。

失敗たちが、蓄光に照らされ光り輝いていた。
そんな不気味なサービス精神を全身に浴びながら、「失敗の部屋」をあとにした。

ちっちゃい失敗、いっぱい。

-失敗というのが、スマイルキッズさんのキーワードな気がしてきました。

原さん:そうね!ちっちゃい失敗を、いっぱいやってると思いますよ!

ちっちゃい失敗かまへんわ!と。その代わり、ヒットも出してくれよみたいな。失敗をあんまり突っつくと、みんな守りに入る。もう失敗せえへんっていう方向行くと面白なくなるっていう。

-それこそ、商品企画の段階でなぜ「こんなもんいらんやろ!」ってならないかって、多分失敗を許しているからなのかなって思ったのですが、どうでしょうか。

原さん:許す気もないよ。失敗したくないんやけど、それも生まれてまうわけですさ。あるものとして認識してる。あとね、上の人が滑ってますから(笑) 上が滑ってるから、下が滑っても大丈夫。

2部リーグで戦う。

原さん:大元をたどれば、僕、高校・大学・社会人でラグビー10年ぐらいしてたんですけどね、試合の何週間も前からサインプレーを30個とか40個考えるんですよ。それを毎回練習でみんなで練習する。実際やってみると2つ3つは失敗するわけです。相手に阻まれたり、予定通りいけへんかったり、ボールが変なところに転がってもうたとか。
いろんなんあるんやけど、中にうまいこと転がったら1個取れたりするんですよ。ほなみんな大喜びするわけですよ。「やっとはまった」って。てなると、みんなサインプレイという博打好きになってくるんですよ。味しめるから。

でもね、これを1部リーグみたいな強いリーグの中でやったら、それが通じにくいんでおもろないんですよ。試合にならへん。戦い方が確立されてるから。ところが2部リーグの試合になると結構小技が効く。
これが商品とすごい似てて。テレビとかパソコンとか、確立されてる1部リーグの商品より、2部リーグであんまりみんながやれへんB級グルメというか、そこのゾーンで戦うんですよ。ほんならしょうもないサインプレイでも勝てる。博打も打てる。そっちの方が、楽しいでしょう。

2部リーグで戦う。
それは、わかりやすい結果や権威が求められる時代に、決して積極的に選べるものではない。
でも2部リーグには、1部リーグがその熾烈さから削ぎ落としてしまった何かがあって、
その何かの部分に、「オモロイ」がぎゅっとつまっている気がした。

-本日はご多忙の中、インタビューありがとうございました。

原さん:こちらこそありがとうございました。あとこの部屋ね、電気消すとね、蓄光でここが光るんですよ。

-うわぁ!